生き抜くのは今日か、未来か -書評- 企業が「帝国化」する
先日のGoogle Reader終了のニュース。
無数にあったRSSリーダーを淘汰し、最後には自身をも淘汰して雑草のみが自生する荒地を残したGoogle。このニュースで私企業が物事を牛耳る「帝国」だということをまざまざと見せつけられました。
本書はそのような「私設帝国」が何故帝国となりうるか、どう帝国と渡り合っていくかを論じています。
頂点と末端
こうした帝国が生み出すのが「格差」。それも同社内での格差。Apple本社で実際にソフトウェアを創造する限られた人間と、その創造物をApple Storeで売りさばく人間。その売りさばくものを形にするフォックスコン従業員。
簡単に「誰でも」できる仕事は超低賃金、限られた人間しかできない仕事は超高賃金という格差が「一つの企業」で起こっていることがわかります。
本書P230より
格差は国の中だけで起こるのではなく、帝国と呼ばれる私企業でも起こっていることがわかります。しかも国のそれより極端に。
もちろんApple以外にも「帝国」と呼ばれる企業の帝国っぷりが紹介されてます。Appleの動向を結構追っている自分にとっては、なんとなく帝国企業の実態は予想できたものの、詳しく具体的な数字で現れるとやはり圧巻です。
そもそもの仕組みを変える方がいいと思うのは僕だけ?
政府よりも資金力を持つ企業がどう自分たちに影響してるかが生々しく伝わってくる本書ですが、最終章では著者が考えるこれからの世界で生き抜く方法を論じています。
確かに能力を磨くことを念頭に置いていれば強く生き残れる可能性は高くなると思います。それは間違いないでしょう。ですが、その生き方には息苦しさを感じざるを得ません。僕のように意識高いフリしてる人間には勝ち目がなさそうに思います。
勝ち抜いた人間の知識と技能が生み出すものの果ては自動化(=機械化)の力だと思うし、人間の入り込むスキはそれ故どんどん狭くなることは間違いないでしょう。中国の人件費が高くなったから次の途上国探しをする的な焼き畑作戦が労働にも押し寄せてきてるイメージです。限界点がいつかきそう。
だからこそ、全人類を同じ土俵に上げる仕組みを見直すべきなのではないかと思うのですが、どうなんでしょうか。
魚が木登りする世界より、猿が木登りする社会の方が高い所にある木の実を採れるだろうし、魚には生きられる分の水があればいい。その水を見ようとしないからこその「危機」だと思うわけです。
意外と近くに生きる術はあるのかもしれません。
目次(Amazon.co.jpより)
第1章 アップルはどうやって帝国化したのか
第2章 帝国の仕組み
第3章 帝国で働く人々
第4章 食を司る帝国たち
第5章 個人情報は誰のものか?
第6章 政府を超える企業たち
第7章 石油依存
第8章 帝国の末端は本当に不幸なのか?
第9章 帝国と付き合う
第10章 ではどうすればいいのか?
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