「伝える」ために必要なことはすべて手塚治虫に学べる -書評- ぼくのマンガ人生
2012/12/12
この前書店に行ったら、「岩波新書 30選」なる素敵企画が開催されていました。
いろいろと気になる本があったので立ち読みしてみたのですが、かの有名な手塚治虫さんの本「ぼくのマンガ人生」がかなり胸につーんと来まして即購入してしまいました。読み終わったのでちょっと感想などを。
手塚治虫との出会い
恥ずかしながらわたくし、手塚治虫さんのマンガを読んだことがなくて、アトムとか火の鳥とか書いてる優しそうなおじさん、という認識しか持ってませんでした。
そんな僕がなぜ手塚治虫さんのマンガではなくエッセイ(?)を手にとったかは未だにわかりませんが、パラパラめくっていると巻末に学生時代の手塚少年の生活をマンガにした「ゴッドファーザーの息子」が目に留まり、読んでいるうちにトリコに。素晴らしいのよこれが。
久々にマンガを読みあさっていた頃の思い出が蘇って来ました。
手塚治虫すごい
本書は巻末にこそ読み切りのマンガが掲載されていますが、他は合間合間に挿絵がある程度。
大体は手塚さん本人の文章で、章と章の間に手塚さんをよく知る人のインタビューが載っているという構成です。いろんな分野について書いているのですが、どの分野に対しても「先見性」がすごい。
後世に語り継がれているものというのは「いつまでも色褪せない」ものが多いですが、本書もその類になっていて、「ホントに10年以上前に書かれたものなの??」と思うほど、「今」をわかっているのです。
音楽家やお笑い芸人、手塚さんのような漫画家もそうなんですが、こういう芸術的な活動をしている人というのは人間の本質的なものがわかっているのか、話を聞いていると「はっ」とさせられることが多いです。
いや、本質をわかっていて、それを「表現する能力」がかなりすごいのかもしれない。
「伝える」ために必要なこと
アトムだって、よく読んでくだされば、ロボット技術をはじめとする科学技術がいかに人間性をマイナスに導くか、いかに暴走する技術が社会に矛盾をひきおこすかがテーマになっていることがわかっていただけると思います。
P.75
「生命の尊厳」が手塚さんの信念だそうです。
手塚さんの書く作品にはこのテーマが何度も繰り返しでてくるそうです。僕は、何かを伝えるためにはブログなどを使って自分の考えてることを「そのまま」書くのが一番いいと思っていました。
ですが、本書を読み終えて「そうじゃないかもしれない…」という気持ちになっています。音楽やお笑い、マンガだって、ものすごく人間の感情に訴える力があることは体験からもわかるし、考えてみると何気にすごいことだなぁと。
そういう芸術作品って、全然自分の生活を結びついてないのに興奮できたり感動できたりするわけです。これを「伝える」と言わずしてなんという。
だから、「伝える」手段なんてなんでも良くって、「自分が何を伝えたいか」っていうことを伝わりやすい形にしてやることが第一だということを身にしみて感じました。
そして、伝えたい!というものがコレといってない僕は、別に無理しなくてもいいよね、なんて思ったりもしました。
おわりに
しかし、この本のマンガを読んでるとき、本屋にいたのに人目を気にせず前のめりで読んでしまうくらい記憶が吹っ飛んでしまいました。きっと手塚さんのマンガには恐ろしくハマれる何かがあるに違いない。
これは読まざるをえない。
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