すがたを消した数学者 -書評- 完全なる証明
2012/12/15
数学には難問があって、証明した時に大きなニュースになるということは記憶に新しいと思います。
ちょうどこのニュースが流れた時に、ある1冊の本を読み終えたばかりの僕はそのタイムリーさにかなり興奮しました。
本書を読むため必要なのは数学力ではなく、好奇心だ。という完全なる証明は僕を見れば明らかです。普通に読めてよかった。
天才数学者、グリーシャペレルマン
ロシア(ソビエト連邦)に生まれたユダヤ人、グリーシャペレルマンの生い立ちから、数学の超難問「ポアンカレ予想」を証明した後までの物語。
「超難問」を解いた人物について書かれた本、と要約してしまうのは正確なようで不正確です。明らかにこの本は超難問を解いた「人物」について書かれた本。ポアンカレ予想については最低限の記述しかされていません。
ポアンカレ予想ですが、「ミレニアム問題」と呼ばれる、数学の超難問の中の一つで、証明が認定されれば100万ドルが受け取れます。が、受賞と同時にペレルマンは人前から姿を消し、賞金も受け取っていません。
幸運な少年
ペレルマンの少年時代、ソ連は「目立つ」ことを一切禁止していました。同じ服装、同じ風景、同じ学力。そんな中で幸運にもペレルマンは教師に恵まれて育ちました。
大切なのは平均的な子供たちに働きかけることではありません。才能ある子供たちに働きかけることが大事なのです。
P.102
その才能を存分に伸ばした彼は、数学以外のことを「無駄」であると認識していました。特に政治を嫌っていたのですが、それは自身が少年時代に受けてきたユダヤ人としての差別ではなく、「政治活動」は理論とは別のところにあるものだと思っていたからでしょう。
世界を数学の観点から見るという感覚は、一般人の僕には全く想像もつかないことです。
意外と自分の状況が一番難しい
ペレルマンと僕の環境では、いろんな意味で次元があまりにも違うのですが、結構参考になることもありました。
三次元空間の生き物である私たちにとって、ポアンカレ予想を理解するのが難しいのはそのためなのである。
P.221
と、あるように、ポアンカレ予想は三次元についての証明なのですが、それ以外の二次元や四次元、五次元以上の証明は比較的カンタンなようで、早い段階で証明されています。
これを読んでいて、五次元が証明できるってどういうことや。と、思ったのですが、人間の世界に当てはめてみても、自分の状況を比較して他人をみることは簡単(な気がする)ということが多々あるので、そういう意味では、世界を数学の観点から見るというペレルマンの気持ちはわからなくもないです。
多分、全く違う次元ではあると思いますが。
数学にしろなんにしろ、「自身を知る」ということが一番むずかしいということを感じました。
さいごに
最近は全く関係のない分野の本を読んでいますが、それでもいろいろと参考になることが多いです。普段とは違う感情を持てるというのはなかなかに楽しい。
自分より上のステージに立つ人が書くビジネス書も悪くはないですが、いっそ一気に次元を飛び越えた人間のエピソードを見て、普段と違う体験をしてみませんか?
目次(Amazonより)
世紀の難問を解いた男
パラレルワールドへの招待
創造への跳躍
天才を育てた魔法使い
数学の天使
満点
幾何学の道に
世界へ
アメリカでの研究
その問題、ポアンカレ予想〔ほか〕
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